日本たばこ産業株式会社
JT(日本たばこ産業)で自律的な挑戦を促す組織開発プロジェクト「PJ nudge(プロジェクトナッジ)」では、メンバー間のコミュニケーションや自発的な行動を促進するツールとして、NewsPicks Enterpriseを導入しています。
導入経緯や、初年度を経て実感している効果、そして組織変革の未来絵図について、「PJ nudge」事務局の古川将寛さんと吉澤遥太さんに聞きました。聞き手はNewsPicks for Business 組織変革ストラテジストの加藤 俊輔がつとめました。
日本たばこ産業株式会社
古川 将寛
日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 事業企画室 課長代理
吉澤 遥太
日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 事業企画室 課長代理
加藤 俊輔
CX事業部 組織変革グループ
NewsPicks Enterpriseには社員の人となりを明らかにする「問い=記事」がある。
中長期的な組織変革のトリガーに据えたい
加藤 :
NewsPicks Enterpriseを導入したきっかけを教えてください。
古川様 :
会社全体がいわゆる“大企業病”を患っていることへの危機感がありました。当社の場合、どうしても部署間のセクショナリズムが起こりがちで、バリューチェーン上では近い関係にあるにもかかわらず、シナジーを生み出せていないという事態が頻発していました。例えば、マーケティングは中長期的なブランドエクイティ向上に注力する一方で、セールスは短期的な目標達成に焦点が集中する傾向にある。しかもこうした現場の状況が、お互いの部門・社員間で理解できていなかったりするのです。
こうしたセクショナリズムを乗り越えるためには、越境型人材を育成しながら、社内外からオープンイノベーションを起こすことが重要です。そこで私は「O2(オーツー)」という有志団体の運営を通じて社内を変革しようとしてきました。そして2019年6月、自律的な挑戦からイノベーションを起こしていく組織開発プロジェクト「PJ nudge」を立ち上げ、情報発信やワークショップ運営などを通じた「内発的な動機付け」に取り組んできました。
ところが、事務局である私たちはある課題意識を感じていました。それは、「PJ nudge」のメンバーがどんな自発的行動を起こしたのか、既存のツールでは把握が難しかったことです。PDCAを回してプロジェクトの効果を高めていくためには、事務局とメンバーが双方向的にコミュニケーションを取れるツールが必要でした。
そんなとき、NewsPicksが主催した、企業文化変革をテーマにしたイベント「Next Culture Summit 2019」にたまたま参加したんです。そこでNewsPicks Enterpriseのピッチや出展ブースを見て、このツールなら自分たちの課題を解決できるんじゃないかと思いました。
加藤:
なぜNewsPicks Enterpriseなら解決できると思ったのでしょう?
古川様:
一般的に、コミュニティやプラットフォームは場所を作るだけでは長続きしません。“核となるネタ”がなければ早々に使われなくなってしまうのは目に見えていました。その点、NewsPicks Enterpriseの中には、最初から話すべき「問い(=記事)」がある。そうしたツールは他にありません。
さらに、記事だけでなくプロピッカー(経済、ビジネス、医療、テクノロジーなど最前線で活躍するNewsPicksの公式コメンテーター)によるコメントが常に代謝されているので、プラットフォーム自体の新鮮さが担保されている。これはサステナブルに使っていける強力なツールになりそうだと考えました。
ちなみに私が長年NewsPicksのファンだったことも、導入の決め手となりました。NewsPicksは他のツールと比べて明らかにUIが優れていますよね。人事担当者がツールを選ぶ際、UI等を軽視しがちですが、長く使い続けてもらう上で、快適なUIは非常に重要なポイントだと思います。
加藤:
実際にNewsPicks Enterpriseを導入して、どのような感想を抱きましたか?
古川様:
やはり、ツールの中に「問い(=記事)」があることで、メンバーのコミュニケーションが促進されている実感がありました。
先ほどお話しした「Next Culture Summit 2019」の出展ブースではじめてNewsPicks Enterpriseを見たとき、AlphaDrive代表/NewsPicks執行役員の麻生(要一)さんがあるニュースに対して「ワオーー!」とひと言だけコメントしていたんです。そのとき、こういう率直な気持ちやシンプルなコメントを気軽に発信できるプラットフォームはすごくいいなと思ったんですね。ちなみに、私の上司は自分が応援しているバレーボールチームが優勝すると、「やったー!」などとコメントしています(笑)。
こういうソフトな感情の共有って、硬くなってしまいがちな社内SNSではなかなかできないと思うんです。ところがNewsPicks Enterpriseでは、どんな硬さのリアクションも許容されている。その設計がとても良いと感じました。
NP加藤:
「やったー!」というようなひと言コメントも、社員の気持ちや組織を動かす際に影響を与えると思いますか?
古川様:
大いにありますね。なぜなら、コメントを通じて投稿者の「人となり」が見えるからです。
例えば、弊社の現場社員の多くは、社長の寺畠(正道氏)を“手の届かないはるか遠くの人”のように捉えているんじゃないかと思います。自分たちには理解できない世界を見ていて、会社のことを寝ずに考えているんじゃないか、というように。実際は釣りに出かけたりするような、親しみやすい一面もあるんですけどね。
現状、経営陣はNewsPicks Enterpriseを利用していませんが、コメントを通じてそんな寺畠の一面を垣間見ることができれば、「理」だけでなく「情」の部分でもその人を捉えられるようになる。現場社員がトップからのメッセージをより受け取りやすくなるのではないかと思うのです。
加藤:
なるほど、発信者の人柄や興味関心を知る上でコメントが役立っているわけですね。他に導入成果を実感した出来事はありましたか?
古川様:
この2月、弊社が海外たばこ事業と国内たばこ事業の2事業体制を一体化するといった大きなニュースが発表されました。日本市場を含む世界中のたばこ事業の本社機能をスイス・ジュネーブに統合し、日本市場はグローバルな事業運営体制のもと、他の市場と同様に世界の中の1市場となるというものです。僕はこれを受けてNewsPicks Enterpriseの中で、「まずは自分がどうするべきか考えよう」と投稿したんです。
すると、「PJ nudge」メンバーの一人が、それに対して非常に熱い想いを長文で綴ってくれました。普段は絶対に書き込まないような人だったので、これはまさに僕らが目指していた自律的な動きが生まれている瞬間だと感じましたね。
しかも嬉しいことに、「『PJ nudge』なら、こういう発言をしても大丈夫だと信じて言います」と書いてあった。それは「PJ nudge」だからということもあると思いますが、クローズドな空間に対する安心感から生まれたもの。NewsPicks Enterpriseというツールに対する信用が生み出したものでもあると思います。
吉澤様:
この他にも、NewsPicks Enterprise内のやりとりがきっかけとなって自発的なプロジェクトが生まれたり、積極的にコメントや投稿を発信し行動が変化した人が昇格したりするなど、NewsPicks Enterpriseから「PJ nudge」の成果と言っていい事例が複数出てきています。導入効果を改めて実感していますね。
加藤:
NewsPicks Enterpriseで発信されているJTさんのコンテンツからは、プロジェクトに対するパッションや本気度が100%伝わってきます。それが「PJ nudge」内での自発的な動きにつながっているのではないでしょうか。
吉澤様:
そうですね、NewsPicks Enterpriseには私たち事務局側が発信したいオリジナルコンテンツを作って投稿できる機能があるので、メンバーに直接思いを伝えられるのがありがたいですね。その内容にもこだわっていて、「PJ nudge」内で行われるミーティングには必ず外部のパートナーに同席してもらうようにしています。
より強いメッセージを伝えたいときは、NewsPicks for Businessの編集チームに要望をお伝えし、メンバーインタビューやインフォグラフィックなどを企画・制作していただくこともあります。
古川様:
対面だと伝わることでも、コンテンツになると見せ方によってメッセージの印象が大きく変わります。その際大切なのが、プラットフォームのデザインとコンテンツの内容のバランスです。
例えば、日常的な業務で使っているプラットフォームの場合、パッションドリブンなコンテンツは浮いてしまう。その一方で、フランクすぎるプラットフォームでは、ビジネス要素の強い発信は悪目立ちしてしまいます。
NewsPicks Enterpriseはそのどちらでもなく、メリハリをつけて投稿しやすいバランスのとれたブランドデザインがなされている。パッションドリブンな記事も悪目立ちすることなく、メッセージ性を担保した見せ方ができるのは、他のツールとの大きな違いです。
NP加藤:
JTの皆さんが効果的に活用できているのは、NewsPicks Enterpriseが「PJ nudge」と紐づいているのも大きな理由だと思います。事務局の皆さんは「何のためにNewsPicks Enterpriseを使えば効果が出るのか?」を、しっかりと考えていらっしゃいますよね。
皆さんがご社内で利用目的や、利用後になりたい姿、中長期的な将来像まで考え抜き、それを現場の活動に生かすという大変自律的な運用をされているように思います。
古川様:
とはいえ、NewsPicksさんのサポートはありがたいです。
導入初期はなかなかコメントすることを躊躇するメンバーが多い印象だったため、どのような動機付けが有効か加藤さんから効果的なアドバイスを多数いただきました。また、「こんな風に使うといいんじゃないか」という僕たちのフラッシュアイデアに対して、効果が見込めるかどうかをあらかじめ教えていただけることも非常に助かっています。
そして何といっても素晴らしいのは、詳細なデータをフィードバックしていただける点です。コンテンツ単位での読者の属性に加えて、読了率もわかる。我々はメンバーのエクスペリエンスを考え抜きながら企画をしているため、こうしたデータがあるのとないのとでは、企画の内容が大幅に変わります。貴重な情報をいただいていると思いますね。
加藤:
その他に、NewsPicks Enterpriseの導入メリットだと感じたことはありますか?
古川様:
コメントを通じて、メンバーの興味関心を具体的に把握できるようになりましたね。それから、発信側のモチベーションも高まりました。普段コメントやPickをあまりしない方でも、事務局の発信に「いいね」を押してくれたりするので。手触り感のあるプラットフォームならではのメリットですね。
吉澤様:
そうですね、コメントから「この人は人材育成に興味があるんだな」とか「新規ビジネスに興味があるんだな」ということがわかります。普段それほど積極的に発信しないメンバーも、私たち事務局発信の記事には必ず「いいね」を押してくれたりもする。リアクションがあるからこそ、私たちもどれぐらいの温度感で事務局を運営していけばいいのかつかめるような気がします。
加藤:
JTさんはNewsPicks Enterprise上で可視化できる定量データ(アクティブ率や投稿数等)に基づく、成果指標(=KPI)を厳密に設定はせず、あくまで参考指標とする運用にしていましたよね。どうしてこのような運用にしたのですか?
古川様:
確かにKPIは決めませんでしたね。でも、それで良かったと思っています。「たくさん投稿やコメントがされている状態」を目指してしまうと、コメントをもらうことがゴールになってしまうのかなと思って。最終的に大切なことって、メンバーの心に「問い」を立てて、行動変容を起こして組織を変革することなので。「木を見て森を見ず」になってしまうというか、見るべき本質を見失ってしまう気がしました。
加藤:
それは私も同感です。必ずしも投稿量や閲覧数といった数値だけが、本質的な成果というわけではありませんよね。大事なのは投稿数やコメント数に加えて、一つひとつのコミュニケーションが、その後どのようなアクションにつながったかを見ていくこと。JTさんは「PJ nudge」におけるKGIが明確に決まっていたので、細かなKPIを設けなくてもうまくいったのだと思います。
最後に、今後のNewsPicks Enterpriseに期待することを教えていただけますか?
古川様:
「PJ nudge」では、中長期的に「年間どれだけの社員の自律的な挑戦をナッジし、その人たちがその先どうなっていくか」を段階的にプランニングしています。このプランが達成されるためには恐らく6~7年以上かかると考えています。その計画のトリガーであり、一大プラットフォームとなるのがNewsPicks Enterpriseです。
最終的には、自律的人材が社内で自然発生的に増殖し、自走していく状態を目指しているので、「PJ nudge」自体はいずれなくなるはず。そうなったときも、社員の自律的挑戦を支援するためのツールとして、NewsPicks Enterpriseは必要ですし、当社におけるプラットフォームのデファクトスタンダードになっていく予定です。グループ企業も含めたグローバル2万数千人まで利用される、会社公式のツールになればベストですね。