パナソニック オペレーショナルエクセレンス 株式会社
パナソニックグループは、DXへの取り組みを「Panasonic Transformation(PX)」と称し、ITシステムの刷新にとどまらず、オープンでフラットな職場を目指すべく、カルチャーの変革を推進しています。
グループ各社でPX プロジェクトが走る中、パナソニックグループのバックオフィス系部門の高度専門人材を集めたパナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社(以下、PEX)では、部門ごとに独自の施策を展開。中でも、知的財産分野の中長期戦略を担う部門の知的財産センターは、カルチャー変革の起点となるコミュニティのプラットフォームとして「NewsPicks Enterprise※」を導入し、PXに取り組みました。
導入の経緯や活用方法などについて、同社のカルチャー変革プロジェクトを担う小山卓郎様と小足直嗣様にインタビュー。聞き手は、企業の組織変革などを支援する株式会社NewsPicks for Business※の組織変革ストラテジスト・加藤俊輔がつとめました。
パナソニック オペレーショナルエクセレンス 株式会社
小山 卓郎
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 知的財産センター IPエキスパート
小足 直嗣
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 知的財産センター IPシニアエキスパート
加藤 俊輔
CX事業部 組織変革グループ
社内のカルチャー変革の起点となる、コミュニティプラットフォームとして活用する
NewsPicks for Business(以下NP)加藤:
PEXさんの知的財産センターでは、社内のカルチャー変革に向けてNewsPicks Enterpriseを導入していただいています。まずは、導入に至るまでの経緯を教えてください。
小山様:
PEX知的財産センターは、DXの達成をミッションに掲げて、2022年9月に「IPXプロジェクト」を立ち上げました。IPXとは、知的財産(IP/Intellectual Property)と、パナソニックグループのDXの取り組み(PX)を掛け合わせた造語です。
DXを達成するためには、メンバー一人ひとりが色々なことに臆せずチャレンジできるカルチャーをつくる必要があると、私は考えています。なぜなら、自分がやりたいことをしているときが、やはり一番楽しくて生き生きするからです。
私がそう考えるようになった原体験があります。前職で業務の評価があまり良くない同僚がいたのですが、一緒に飲んだときに「業務プロセスを変えたいんだよね」と語ってくれたんです。それで、じゃあ一緒にやろうということで、実際に業務プロセスを変革に取り組みました。そのとき、同僚がとても楽しそうに取り組んでいて、プロジェクトを通して高い評価を受けました。この経験は、私の仕事に対する価値観や、IPXプロジェクトの方針を決める上でも大きな影響を与えています。
知的財産センターは650名ほどの組織で、かねてより控えめで内向きなカルチャーが根付いていました。「やりたいことがあっても手を挙げない方がいいかもしれない」「成果が出なかったらどうしよう」という慎重な人が多く、組織として新しい状況や変化に対応しづらい状態です。このカルチャーが、チャレンジできる組織をつくる上でのボトルネックでした。
これは私たちの組織に限らず、大きな組織になればなるほど「穴に落ちることがこわい」と、硬直化してしまうものではないでしょうか。一人ひとりが「失敗はいい経験になる」くらいのポジティブさを持ち合わせていないと、組織のカルチャーは変わらないと思います。
そこで、まずは自主的な活動の起点となるコミュニティづくりから着手。2022年11月に「Future+1Base(フューチャープラスワンベース)」と名付けたコミュニティを立ち上げました。そしてFuture+1 Base でコミュニケーションをはかるプラットフォームとして、NewsPicks Enterpriseが最適だと考え、導入に至りました。
NP加藤:
NewsPicks for Businessは、Future+1 Base のコンセプトづくりから支援しておりましたが、初めから小山さんと小足さんのビジョンが明確で、実現したいことがはっきりされていましたよね。F1Bの本格稼働の前に、まずはPoCでNewsPicks Enterpriseを検証していただきました。なぜNewsPicks Enterpriseを選んでいただいたのでしょうか。
小足様:
NewsPicks Enterpriseを活用したコミュニティづくりに取り組まれている他社事例を見聞きして、まさにFuture+1 Base に必要なサービスだと感じたからです。カルチャー変革のためにはコミュニティが必要であると思ってはいたものの、そのコミュニティを動かし続けるためのプラットフォームがないと空中分解する気がしていました。
小山様:
ノウハウを持っていない自分たちが、いちからコミュニティのプラットフォームをつくるのは困難です。NewsPicks Enterpriseなら経済メディア「NewsPicks」を活用できるので、コンテンツをきっかけにメンバーを集めやすいのではないかと考えました。
一般的な社内報ツールですと、運営サイドが自分たちで情報発信を行う必要があり、その対応に追われてしまいます。しかしNewsPicks Enterpriseでは、自分たちの発信でなくとも日々良質なコンテンツが提供されていますので、メンバーは継続してコミュニティにコミットできるのではないかと。また、NewsPicksはカルチャー変革に関連する記事コンテンツも充実しているのもポイントです。メンバーがそれらに目を通すことで個人のマインドが変化するのではないか、という期待もありました。
(実際にNewsPicks Enterprise上で交わされたコメント)
NP加藤:
Future+1 Base は2023年4月から活動を本格化し、知的財産センターと関連会社あわせて全国30拠点・約650名中、約100名(2023年10月時点)まで拡大しました。コミュニティの活動は大きく「F1B Seminar」「F1B Vision」「F1B Creation」の3つにカテゴライズされており、私たちNewsPicks for Businessはすべての活動を包括的に支援しております。まず、それぞれの活動についてご紹介いただけますでしょうか。
小山様:
まず、「F1B Seminar」は、PEXに不足している情報や知識のインプットを目的に実施しています。例えば、2023年9月には、日本テレビのドラマ『それってパクリじゃないですか?』のプロデューサーに登壇していただき、「エンタメから知財の可能性を探る」をテーマにトークセッションを開催しました。
知財関連の講演は弁護士や弁理士の方が講師を務めるケースがほとんどなので、新しい方に講演を依頼したいと思っていたんです。そこで、私たちの活動とテレビドラマを関連づけられないかと思い加藤さんにご相談したところ、具体的な企画としてかたちにしていただきました。
次に、「F1B Vision」は、その名の通り知的財産センターのビジョンを伝える活動のことです。主に、経営トップや外部有識者の記事コンテンツを通してメンバーに私たちの進む未来像を示しています。
具体的には、コミュニティの意義やチャレンジの重要性についてトップに語ってもらう企画を立案。PEXの執行役員で知的財産担当の徳田佳昭と小足の対談記事を制作しました。これは、メンバーに組織のビジョンやコミュニティの重要性を理解してもらう上で役立ったと思います。独自の記事コンテンツについても、NewsPicks for Businessさんが制作し、それを社内限定の記事として配信しています。
「F1B Creation」は、ボトムアップ型でカルチャーを変革するムードの醸成のために、F1BメンバーのWill(意志)をかたちにする活動です。例えば、話題の生成AIを業務にどう活用するのかを議論する「AIトレジャーハンター」を昼休みに実施していますが、これはコミュニティのメンバーが自主的に手を挙げてスタートした取り組みです。
こうした活動についても、NewsPicks for Businessの加藤さんから自主活動をサポートしてくれる人材、AIトレジャーハンターで言えば生成AIの専門家の紹介や、「こうしたら盛り上がるんじゃないか」と都度アドバイスをしてもらうなど、多面的にサポートしていただいております。
(実際に社内で展開されたオリジナル記事・イベント)
NP加藤:
『それってパクリじゃないですか?』プロデューサーのトークセッションは、参加者300名と大反響でしたね。「F1B Vision」のPVも上々ですし、「F1B Creation」も「AIトレジャーハンター」をきっかけにボトムアップで何かにチャレンジしたいという機運の高まりを感じます。知的財産センターの皆さんのマインドが、コミュニティを起点に積極的なマインドへと少しずつ変化しているような印象を持っています。
小山様:
私たち社内の人間だけでは、到底実現できなかったと思っています。現在、「F1B Vision」の記事コンテンツの企画骨子も、取材調整も、すべてお任せしています。NewsPicksのアプリ上で見やすいように記事のレイアウトも工夫してくださった上で、納品していただいています。ちなみに、PV数が最も伸びた時期と記事を配信した時期が連動しているので、確実に成果につながっていると感じています。
小足様:
知的財産センターのメンバーは、知財関連の業務がメインなので、基本的にカルチャー変革は専門範囲外なんです。ましてや、記事をつくって配信する経験なんてなかったので、NewsPicks for Businesの柔軟なサポートは本当に助かっていますし、やはりプロが作った記事の質の高さを実感しています。
小山様:
あと、個人的には心が折れそうなときに、加藤さんからエールをもらえるところに価値を感じています。F1Bは最初40名のメンバーからスタートして、現在100名に増えましたが、なかなかメンバーが増えない時期や、セミナーを企画しても参加者が集まらない時期もありました。やっぱり不安になりますし、手応えがないとしんどいんですよね。そういうときに、加藤さんに話を聞いてもらうと、「他社さんではこうですよ」「こうしてみると良いかもしれません」と他社事例や現状打破につながるアドバイスをくださるので、支えになってもらっています。
NP加藤:
そうおっしゃっていただけると嬉しいです。今後は、NewsPicks for Businesにどのような支援を期待されていますか。
小山様:
お陰様でFuture+1 Baseの参加人数は少しずつ増加しており、社内での知名度も高まってきています。メンバーが集まりやすくなった状態なので、中身の活動をしっかり活発化させていきたいなと思っています。もっとメンバーから新しい活動がポコポコ生み出されるようなカルチャーが理想なので、加藤さんには今後もパートナーとしてサポートしていただきたいです。
小足様:
遠回りかもしれませんが、自立的な活動が一つずつ増えていくことが、カルチャーを変える近道のような気がしています。Future+1 Base の立ち上げから1年弱経過しましたが、加藤さん達の支援を受けながら、私と小山はコミュニティづくりのノウハウを貯めてきました。いずれは私たち以外のメンバーにコミュニティづくりの主導権を渡すことも見据えながら、継続的に活動していきます。